


「靴を作るのが好き。売れないから、つまづいてしまったからやめるという選択肢はないです。」高校生の時に独学で初めて革靴を作ってからずっと靴を作り続けている靴職人の角田健太郎さん。綺麗な靴を作りたいという思いがずっとあるという。一足の靴を作るのに幾つもの工程がある。そのほとんどは外から見ても分からないものだがそこを丁寧にやっていくことで美しい靴ができあがる。しかし技巧を凝らして綺麗に作りすぎてもそれは誰が履くのだろうというオブジェのような靴になってしまう。革靴はスーツを着て履くものだから靴だけ綺麗に作りすぎてもバランスが悪い。その人の仕事、年齢、体格などと相談しながら一番良いバランスを見つけて形にしていく。やればやるほど見えてくる。次に直したいところも出てくるから終わりがない。好意にしてもらっているお客さんには見たらそれが角田さんの靴だと分かるという。目に見えないところまで丁寧に作り上げた靴から品性が漂う。一生靴を作り続けるのが目標だという角田さん。「たとえ火事で道具とか全部焼けてしまっても鉄さえあればまた作れるんで。天職なんだと思います。これ、一生やめちゃだめなんだろうな」と語ってくれた。今日も無心になって手を動かす。その手元から新たな一足が生み出される。何足もの靴を作り続け鍛えられたその手さえも美しく見えた。
















Profile
角田健太郎 / 靴職人
1981年 広島県生まれ
学生時代から独学で靴作りを始め、上京しビスポーク靴店 GUILD( ギルド)直営の英国式手製靴学校に入学、靴の基礎と製靴技術を学ぶ。
卒業後は株式会社 GUILD に最年少 24 才で入社。ビスポーク靴の製作と靴学校講師を7年兼任。
その後、義肢装具会社の製靴責任者として勤めた後、独立。
現在は、自身のビスポークブランド「Kentaro Sumida」を立ち上げ。
紹介型のプライベートオーダーというスタイルで、顧客と綿密な話し合いのもと作りあげるフルオーダー靴を手掛ける。